サンゴ再生の技術
出典:「有性生殖によるサンゴ増殖の手引き」水産庁
移植のためのサンゴ種苗を生産する手法には、サンゴの一部を採取した断片を着床具に固定する無性生殖法と一斉産卵を利用して卵と精子を受精させ、幼生を着床具に着生させる有性生殖法があります。
無性生殖法は、断片の採取により親サンゴを傷つけること、大量の断片を確保しにくいこと、同じ親サンゴから採取した断片の間では、成長して産卵しても受精しないこと、遺伝的多様性が低くなることなどが指摘されています(日本サンゴ礁学会,2008)。
一方、有性生殖法は、高度な技術と人員の確保を必要とされますが、親サンゴを傷つけず、同種で遺伝的に多様なサンゴ種苗を生産できるので、例えば、同種の種苗を密集移植し、産卵サイズまで育てることができれば、産卵時の受精率を高められる点が、広範囲のサンゴ礁の修復・再生には有効と考えられています。
こうしたことから、八重山漁協では、有性生殖法を使ってサンゴの種苗を大量生産し、これを中間育成して一定の大きさに育て、面的に移植するという 3 つの技術で構成されるサンゴ面的増殖技術に取り組んでいます。
サンゴ面的増殖技術について
3つのステップで増やします
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種苗生産
- 特徴 1
- 着床具はプラスチック製を使用することが多いですが、八重山漁協では環境に配慮し、サンゴ砂で出来た着床具を使用しています。
- 特徴 2
- 八重山漁協で使用している収集装置の下部は、傘状の布地からチューブが上方に伸びた形状となっています。これにより幅広い水深に対応した装置の設置が可能となり、親サンゴから放出された卵を効率的に収集できます(卵はチューブを通って浮上し装置本体へ収容されます)。
幼生収集装置を用いたサンゴの種苗生産(イメージ)
実海域で幼生収集装置を用いて卵・幼生を確保し、着床具に幼生を着生させて種苗を確保します。
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収集装置設置の様子
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傘のような形をした収集装置の下の部分
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着床具投入の様子
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収集装置内でのサンゴ産卵の様子
種苗成長の様子
-
3ヶ月
-
6ヶ月
-
1年
-
1年半
中間育成
着床具に着生したサンゴ種苗を、成育環境がよく、管理の容易な実海域に設置した中間育成施設へ運び込み、移植サイズになるまで育成します。
着生直後直径:約1mm
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約15ヵ月齢約40mm
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約3歳齢約10-15cm
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着床具並べているところ
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中間育成の様子
移植
移植適地を探すために複数地点の水深、水温、流れなどを調査し、一番環境が良い場所へ移植します。移植後はサンゴの成長や生残率を高めるため、定期的に育成管理を行います。
移植適地の選定
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目的地への移植
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移植後のサンゴ
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